ユートピア研究

『見つけ出すもの』ではなく『作り出すもの』、それがユートピア

ユートピア思想

36. トルストイのイワン王国 ~無抵抗主義、反戦主義を反映した思想~

トルストイは、もっとも偉大な反逆者の一人であり、その長い嵐のような生涯を通じて、ロシア正教会や政府、文学的伝統、そして自身の家族とさえ対決した人でした。 そ反面で彼は保守主義者でもあり、科学的実証主義の時代にありながら、なお神の理想を飽くこ…

27. イエズス会について

イエズス会は、1534年、スペインの騎士道精神に富んだ武将として活躍した軍人イグナティウス・ロヨラによって設立された修道会です。 ロヨラは、プロテスタントとの戦いで瀕死の重傷を負ったことが彼の人生の転機となり以後、霊的体験を高め、学問に励み…

26. イエズス会のミッション(伝道村) 

南米のパラグアイには、世界遺産に指定された「トリニダとヘススの遺跡」があります。 この遺跡は、1608年にスペインからやってきたローマカトリック教の一派であるイエズス会の宣教師たちが現地のグアラニー族を改宗させ、そして彼等を文明的なクリスチ…

25. ハンコック・シェーカー教徒村 家具職人の集団社会

ピューリタン教徒を先頭とする宗教グループのアメリカへの移住は、家族単位での開拓事業でした。 その中、シェーカー教は18世紀終盤、アメリカ合衆国に起った厳格な清教徒の派で、「自給自足の共同生活」を基本的スタイルとし、木工の仕事に専門化し、アメリ…

24. クエーカーの社会的実践

友会徒の社会的実践は、すべての人に内なる光があるのであるから、人間は無限に尊く、はかり知れない可能性を有すること、そして人はその内なる光に従って行動する自由を持っている。 とくに平和問題については、最も重要な運動の一つとして、多くの友会徒に…

23. クエーカーの信仰の特質

友会徒は、すべての人の心のうちに常に神の力が働いていることを信じる。 このことを「内なる光」、「内なるキリスト」あるいは「キリストの種」などという。これがキリスト友会の信仰の基本である。 このように神が、わたくしたち一人一人に直接語り、そし…

22. クエーカーの歴史

キリスト友会は、17世紀半ぱ、イギリスにおいて、ジョージ・フォックスによって始められた宗教運動が機縁となってつくられたキリスト教の一派である。 フォックス達の「真理」を求める運動は、既成教会の形式的制度等に強く反発することから、国教会等によっ…

21. クエーカーとは

キリスト友会(クエーカー)は、17世紀の英国でジョージ・フォックスなどによって始められました。 礼拝は、静かな沈黙の中に、参加者が共に神の働きかけをひたすら待ち望みます。各自が神と直接交わることを強調し、信仰を生活の中で具体的に実践します。…

18. 千年王国の思想と運動

千年王国の思想を、社会的、政治的、経済的に抑圧された階層による、自己救済を目的とした宗教運動として広く定義するとすれば、ヨーロッパ圏に限らず世界各地の社会に個別に存在してきました。 全く別の源流を持ち、独自に発展してきた思想が、千年王国論と…

17. ピューリタン革命に影響した「千年王国論」

最近の研究では、この清教徒たちの「大移住」には、「千年王国論」が大きく影響していると見られています。 千年王国論とは、キリスト教の宗教的解釈の一説で、『聖書』の「ダニエル書」や「ヨハネの黙示録」をもとに、将来キリストが再臨し、地上でキリスト…

16. ピューリタンの理想社会の実現 ~アメリカ民主主義の発祥~

アメリカとは何か、と言うことを考える場合、一つ、頭の隅にでも入れておくべき基本的なことがあります。 それは、アメリカは移民の国であり、ヨーロッパからアメリカへの初期の移民は宗教難民だったということでしょう。 その中でヨーロッパからアメリカへ…

10. 宗教者たちのユートピア造り

ユートピアの中には宗教思想が土台となり、安定した理想的社会を築き、地域社会から尊敬されるケースも多くあります。 キリスト教の原点である、キリストとその弟子たちの、家計を全部一緒にした衣食住共同体が原始共産主義の土台であるとされているため、ア…

8. 経済学者たちのユートピア

16世紀は、プロテスタントとカトリックなどによる宗教対立争いの一部としてのユートピア的社会造りがみられました。 その後、それが社会問題や経済格差問題が要因として平等や自由、人権などが観点となったユートピア社会への憧れが深まりました。 これが19…

7. モアの与えた影響

~理想郷造りの試み~ モアの作品「ユートピア」は、16世紀当時のヨーロッパで大きな影響を及ぼしました。 そして、モアの作品に影響されて理想的な社会創りを考える人々が世界各地に現れました。 当時の行き詰った状態にあった社会体制に夢と希望を与えたの…

6. 政治家トマス・モアの描くユートピア

モアの本の中では、ある旅人が、理想郷と思える国をモア達の前で開陳するという構成でかかれています。 このユートピアは原始共産主義の思想が反映されているのですが、モア達の時代は、絶対主義の時代に入りかかった頃なので問題になることを避け、それを伝…

5. ユートピアの生みの親 ”トーマス・モア”

今日は、ユートピアの生みの親である、「トマス・モア」について研究していきたいとおもいます。 トマス・モアは、1478年2月7日ロンドンで生まれました。祖父・父ともに法律家で、彼もオクスフォード大学に学んだあと法律の学校に進み、1504年議会で庶民院議…

4. ユートピアとは(4)

ユートピア文学 ユートピア思想の文学といえるものは古くから存在し、歴史とその時代の文学に影響してきました。 古代ギリシャの「ギルガメッシュの牧歌的理想郷」 西洋人がたちが想像した「東洋の桃源郷」 老子の「少国寡民の理想」 プラトンの「国家」 サ…

2. ユートピアとは(2)

ユートピア思想とは ユートピア思想というのは、満足できない現状にたいする批判から出発しているのではないのでしょうか。 それが、批判だけではなにもならないことに対し、今度は自分で理想的な社会思想を構築してみることから、さらにそれを何らかの形で…

1. ユートピアとは(1)

理想郷とは、見つけるものではなく造り出すもの ユートピアは「理想郷」や「理想国」、「理想社会」とも言われています。 「ユートピア」という言葉は、もともと16世紀イギリスのヒューマニストで官僚・政治家のトマス・モアが書いた本の題名で、その物語中…