ユートピア研究

『見つけ出すもの』ではなく『作り出すもの』、それがユートピア

45. わっぱの会知多共働事業所 キーワードは共生・共働 

 




 『わっぱの会知多共働事業所』は2000年4月、愛知県武豊町名鉄武豊線冨貴駅すぐ)に開設されました。食の基本である『農』を大前提に置いています。直営の農場を耕し、そこでみなで生産した農産物を事業所に持ち帰って加工品にするという、一貫した生産活動をめざしています。現在健常者のスタッフ10名ほどを含めて、35名ほどのメンバーで運営されています。共働事業所は知多のそれを含めて6カ所(会員約180名)。

 母体となる『わっぱの会』は名古屋市昭和区を拠点に1971年より、精神障害者とともに働き、その社会的自立を支援しようという目的で活動しています。会が設立された当時は、学生運動が世界的に終焉をむかえたころで、各自が何らかの文化的活動の中から、思想的な意味での自立を確立しようとしていた。わっぱの会はそんな中、社会的に自立し、独立した、ちょうどコンミューンのような位置付けとして設立されています。

 わっぱの会という福祉施設(表現は正しくないかもしれません)が、他のそういう団体とちがうのは、『施設』という考え方をしていないという点です。消費者がじゅうぶん納得する良質のものを生産し、それ自体が事業として成立することを目標としています。だから事業所を社会復帰するための準備というか職業訓練の場というような位置付けはしていないのです。

 わっぱ知多共働事業所の所長である、黒田 肇さんは88年に入社(入会)。彼は農業を基盤とした活動を夢見て知多半島を訪れ、93年から農業活動を始めました。その過程で、精神障害者との共同生活所(グループホーム)を南知多町武豊町などで開設(現在名古屋、知多で9カ所)。そして、2000年のわっぱ知多共働事業所開所。

 今年は麦1haと米(もち米も)23aのほか、キウイ、梅、柿などの果樹、野菜全般を1haほどといったところで、「けっこうがんばらないといけない」と黒田さん)。現在作られている農産物の多くは、加工用として共働事業所で利用されています。


事業所には、農産加工をするための調理室が完備されており、多種類の加工品に対応している。スタッフは加工室長の島田さんほか常時数名で運営。

 加工品のラインアップとしては、常時20~30種類はあり、こだわりの消費者にとっては大きな魅力となっている。漬物は白菜キムチ、大根のサワー漬、小松菜の楽天漬(野沢菜漬風)、奈良漬など。その他にトマトソース、各種ジャムなどがあり、バラエティーにも富んでいる。

 またメインの事業として注目したいのは、知多事業所の製粉施設です。

 製パン事業は名古屋で長年行なわれてきたわけですが、その原料となる小麦粉を作るための『製粉機』をこの共働事業所は完備しているところも注目しておきたいところ。直営農場で採れた無農薬の小麦と、音羽米研究会産の減農薬小麦(除草剤一回)を使った小麦粉(地粉)も生産しています。

 農業のゆくさきがいろいろと懸念されている昨今なのだけれど、それを日本人の文化の原点というところから考え、積極的に取り組んでゆこうとする動きのあることは非常に心強い。

 農業を単にビジネスとして考えてしまうのでなく、わたしたちの生活の基本的な部分、つまり『文化』として位置付けることの大切さを今一度、わたしたちも再確認しようではありませんか。


 母体わっぱの会の理念




障害を持つ人とそうでない人の共生を軸にして、自然との共生、環境との共生を大切にする事業をすすめる。共生を基本とする事業には、積極的創造的に取り組んでいきたい。 



事業内容 


パン・クッキー・洋菓子製造、販売業
印刷業食品・雑貨販売・農業
障害者への介助等、サービス業