ユートピア研究

『見つけ出すもの』ではなく『作り出すもの』、それがユートピア

55. 自給自足共同体  - 参考ケース紹介 - 

 

 


 


埼玉県の「新しき村」 

 新しき村は、武者小路実篤氏が提唱した「人間らしく生きる」「自己を生かす」生活、社会作りに共鳴した人々と共に始められた運動で、一言で言えば理想的社会を作る運動。自分がよりよく生き、そのことで他人の役にも立ち、お互いの協力が生まれ、全体の生き生きとした共同生活が生まれることを目指して、働く処です。


ブラジルの「弓場農場」 


 弓場農場は、ブラジルの田舎に26家族、約80人の日系人が暮らす共同農場で、農業の傍ら芸術活動を行っていることでブラジル日系社会では有名なところ。

 農場は「祈ること、耕すこと、芸術すること」を理念とし、農場員を拘束する規約はいっさい作らなかった。入りたい者は誰でも入れたし、出て行きたい者を止めることもしなかった。いかなる理由からであれ、働かないことを咎められることもなかった。現代日本の価値観からするときわめて非現実的な集団と思われるだろうが、この農場が激動期のブラジルで六十七年間を生き抜き、すでに三世の時代に移りながらもユバ・バレエが多くのブラジル人に愛されていることは否定しようのない事実である。芸術による人格の解放が農を支えているのである。


NPO PAF 地球大学

 NPO PAFグローバルユニヴァー・シティー 地球大学は 地球の文化を形成する根源的要素が、全人類ひとり、ひとりの意識と意志の発露にあることを認識し、個々人の永続的学びの場と機会を提供する。この集積が人類の幸せと平和につながり、ひいては全存在物の調和のとれた存在様式へと変換されていく体験的学習を、アート(芸術)とサイエンス(科学)、そして生物共生とのかかわり(有機農業)を基礎とし、子どもたちも含んだ、全分野的学習活動を通じて行うことを目的として設立されるものである。 


 

DASH村企画

若い人達に農業の仕事と田舎の暮らしに憧れさせることを意図に、今村司というテレビプロデューサーが企画した自給自足の村作り。芸能人の若者たちをたくましい農村の青年に変えていくことにより、「土地と生きる、自分で食べ物を作る。それが人としてカッコいいことだというのを伝える。土地のおじいさん、おばあさんが素晴らしい知恵者で、人生の先輩だというのも分かる。」といった影響を狙ったいる。テレビが農業の素晴らしさを伝える企画。



特定非営利活動法人 ミレニアムシティ

 この活動は、身近な環境である住まいと都市を通して、新しい人間観、生活観をつくり、地球環境の蘇生化に取り組みながら、豊かな人間関係や自然環境をふたたび私たちの手に取り戻すことを目的としています。
 ミレニアムシティとは、“市民が望む身近な環境を、自らの手でつくる都市”です。この都市に賛同した人々が集まり、自分たちの望む環境を考え、そして、実際に都市をつくり、そこにいっしょに住むことをめざしています。
 ミレニアムシティには規模や立地の制限はありません。都市と言っても、ネットワークで結ばれた新しい都市像を想定しています。新しい産業構造や情報通信技術がそれを支えてくれることでしょう。 


「癒しの郷」計画


 コミュニティ「癒しの郷」は、同時期全国にたくさん作る計画です。誰でもメンバーになれます。誰でも村の発起人になれます。村はすべてのメンバーのアイデアを集結して作って行きます。

<コミュニティ(共同体)の生活とは>
気心の合う非血縁者で、生涯生活グループを作り共同(合同、分担、相互)を行う生活。 経済効率がよく、許容力の大きい安心の暮し方です。 共同体とは、定年のない自立した経済ユニットです。



フィンドホーン共同体

 フィンドホーン共同体、それはイギリスのスコットランドの北の端、北緯58度近くにあります。1962年11月16日、一台のキャラバンカーに乗った、ピーターキャディと妻アイリーン、 3人の幼い子供たち、そして友人のドロシー・マクリーンがフィンドホーン村の外れのキャラバンパークに移り住んだ時から始まりました。
 そこは荒涼としたハリエニシダ(ゴース)しか咲かない砂地でした。彼らは自分たちの食料を作るために菜園を作るのです。ドロシーの聞く精霊たちの声の指示に従って、野菜づくりを始めると、そんな荒地に、形も味もいい野菜が実るのです。そして、18キロのキャベツや、27キロブロッコリーが取れるようになったのです。
 この『フィンドフォーンの奇跡』の野菜の収穫の噂は広がり、農業の専門化も訪れ、こんな土地でこれだけの作物ができる事に驚きました。
 1998年にはNGOとしての認可もうけ、現在年間世界70ヶ国以上の国から、14、000人が訪れるコミュニティになっています。(2003.6現在)
 スピリチュアルな教育プログラムや、エコロジーに関するプログラムなど様々な学びの場も提供しています。


有限会社 やさか共同農場

 やさか共同農場は今から20年以上も前、島根県弥栄村に街の若者達が入植し生まれました。共同体の建設という数字や形では難しい事業からスタートしました。人と自然が共存し得る農業を目指し、今日まで地域性を生かした米、野菜づくり、畜産、山林利用、農産加工を続けています。そして、弥栄村の地元の方たちと協力しながら村作りに取り組んでいます。  これまで都会から多くの田舎暮らしや有機農業を志す仲間が弥栄村に来ています。そして集落という小さな地域社会に生活の基盤を築いてきました。
 ここで、NPO法人を立ち上げ、農芸学校を計画し、農協や生協組合のスタッフとしての参加など活動は広がっています。 


共働農場なのはな村

 共働農場“なのはな村”では、障害をもつ人、もたない人、だれもがあたりまえに楽しく生きていける社会への小さな試みとして、有機農業を中心とした共働生活を営んでいます。 


 

 

 個人での自給自足生活を目指した試み 



自給自足のエコロジーライフ


 信州北アルプスの山麓 安曇野に、私の宿がある。自活のための畑は ペンションの食事に供される。近くには山や林もあり、春の摘み草の時期や秋には取り切れないほどの野草が手に入り、周辺がまさにス-パ-マ-ケットの趣、自然のありがたさに頭が下がる。 山を降りて、3年の建設期間を経て今年で20年、宿をオ-プンして18年目となる。宿を始めた動機は少しでも自給自足に近い生活がしたかったからである。
物が溢れ人間性も失われ、人が歯車化されていく。その歪みの中で我々は生きているように思う。専業分業化の社会をつなぐものがお金であり、大変お金のかかる時代に我々は生きている。ほんとうはもっともっとシンプルで自由で、時間に縛られることなく豊かに暮らせたように思う。
そんな中で肥大化した社会を縮小するとともに自発的簡素さと農的な暮らしが現代を救いうるのではないかと思う。また自給自足の可能な小規模経営の小さな宿はまた時代のニ-ズにあっているとも言える。

 


 

アルゼンチンの自給自足農場「のうじょう真人」

 南米パタゴニアアンデスの麓で自然農園をめざしながら半農半陶の生活を送っています。自然を尊び、自然から学ぶ生き方をする「真の人たらん」と、私達の土地“マジン(Mallin)村”から 「のうじょう真人(マジン)」と命名しました。 
 自然の中、土の上で動物達と共に生き、出来る限り手作りの暮らしがしたい。そんな贅沢な夢を実現しようとしています。
 “皆様ものうじょう真人のこころの住人になりませんか?”

 


 

えこふぁーむ・農民芸術学校


 有機農園をつくり、それを自給的共同体にまで発展させることを目標として、牧野 時夫さんが作られた有機農園「えこふぁーむ」は、15年を迎え、単に安全で美味しい食品を生産することを目的とするのではなく、経済効率のみを優先する近代農業に対抗して、すべての生命を尊重して環境と健康に配慮し、自給的かつ共生的な社会を目標にした実践運動としての農場を運営している。

 目指している自給的共同体を維持するためには必要な3つの要素があり、第1に価値観の共有(宗教あるいは哲学)、第2に共同体の維持に必要な生活の技術(特に農業技術)、第3に生きることの喜びの表現としての芸術の尊重であるが、この3つのうちどれが欠けても共同体は崩壊すると言われる。 宗教、農業、芸術、この3つが統一されることが必要で、祈ること、耕すこと、表現することが、分業されるのではなく、各個人によって行われなければならないと考えておられ、そのための手段として「農民芸術学校」構想を進められている。宮沢賢治の『農民芸術概論綱要』と石川三四郎アナーキズムを思想の基礎とされ、武者小路実篤の新しき村構想にも共通した考えが見られる。