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ユートピア研究

『見つけ出すもの』ではなく『作り出すもの』、それがユートピア

56. 自他共生の精神をもつ自給自足 循環型経済社会の提案

自給自足 共生型社会

 

多くの国々が、経済成長をして経済大国になることが幸せだという信仰を持ってきた。歴史的には大航海時代から約500年間、こういう考え方を続けた結果、今、人類の生存を脅かす事態が起こっている。

 経済大国を目指す国々は、工業中心の社会を作ってきた。それが、深刻な環境破壊をひき起こしている。大量生産が大量の有害物質を排出し、大気、水、土壌を汚染している。このままでは、100年後の地球は温暖化が進み、砂漠化して水が枯渇する。南極や北極の氷が溶け、地表の大部分が水没する事態も予測される。

 また、工業中心の社会は石油資源が支えている。石油なくしては1日も暮らせないし、石油を制するものが世界の経済を制すると言っても過言ではない。そのため石油をめぐる闘争や紛争が絶えない。アメリカがイラン、イラクと対立をしているのも、石油の埋蔵が集中しているこれらの国を支配しなければ、今後の経済が成り立たないからだ。しかし地球の石油の埋蔵量は、あと40年しかない。原子力などの代替エネルギーは、コストや安全性の面で問題が多い。つまり、経済成長を望むことが必然的に環境を破壊し、戦争を不可避にしているのだ。環境破壊や戦争は、情緒的に非難するだけではだめで、人類が生き延びるために防ぐべきなのだ。

 工業化による経済成長には限界がきていて、今後も続ければ、将来、滅亡の道をたどる。日本も例外ではない。だから日本を含め、人類は今後、目先の景気の良し悪しよりも、経済活動の方向を、根本的に大きく舵を切って変える時期にきている。


■ グローバル経済では破滅する 

 人類が生存していくためには、大気と水と食物が不可欠だが、世界的に土壌汚染と水の枯渇が進んでいるうえ、人口爆発が起こっている。だから今後は、資源の枯渇と環境破壊を早める経済から、安全な水と食料を確保でき、持続的に続けられる経済に変わらなければならない。

 原始時代にもどるということではなく、地域で必要なものは、地域で確保する。農林水産業を中心にして、できるだけ自給自足をする。商工業活動でも不要なものは作らず、運送しない。流通に依存せず自立した経済圏の形成を目指す。それを持続的に続けるために、環境破壊を食い止め、資源を循環的に利用できる仕組みを作る必要もある。 

 こういった経済はグローバリゼーションの対極にある。国際貿易が促進されているが、貿易とは、先に工業化した国が、他地域の資源を収奪することだ。貿易依存型の市場原理主義が行き過ぎると、世界は工業化した少数の勝ち組社会と、資源を収奪される圧倒的多数の負け組社会に分かれる。負け組の最下層は、飢餓、餓死の状態になる。現在でも地球上で年間何百万という人が餓死している。

 貿易で他国に迷惑をかけるグローバル経済ではなく、国や地域の風土や伝統を大切にした自給自足型の経済圏を作る。そのためには国単位ではなく、地域や州といった中小規模の経済圏を、多数構成する必要がある。

■ 「知足の経済」ヘ 

まず食料の自給と、水の健全性を確保することが第一だという基本認識を社会全体で持つ必要があるだろう。また経済のもとは、有限である自然の資源だということも認識すべきだ。

 その上で、循環型の社会システムを形成する。具体的には、中小規模の都市を里山や田園地帯が囲み、自立した経済圏を作る。地域は、交付金補助金で食べていくのではなく、自立して真の地方分権を行なう。環境破壊を進める無駄な公共事業をやめ、そこに携わっていた労働人口は、農林水産業に移行する。

 経済は当然、ゼロ成長や低成長になっていくだろう。だからと言って、生活の質が落ちるわけではない。経済成長を求めて生産と消費、廃棄のスピードを速めるよりも、資源を健全に使い、節約と質素を美徳とした「足るを知る」経済のほうが、精神的にも倫理的にも健全で、安定した生活を送ることができる。

 浪費と貿易依存の経済成長を目指せばリスクが増大する。そこから脱皮し、自立したコミュニティの中でゆっくりと生きる「知足の経済」ヘと、社会システムを転換すべき時がきたのではないか。