30. ニューハーモニー計画 庭園都市の「共同村」
ローバート・オーウェンはイギリスにおける最初の社会主義思想家であり実践家でもありました。19世紀のイギリス産業革命のまっただ中に理想社会の実現をめざした勇気あるユートピアンです。
彼は、
など労働者のための様々な構想を発案し、産業界に革命を持ち込みました。
彼は若くしてスコットランドのニュー・ラナーク村の紡績工場の支配人になり、経営を成功させ、労働者の過酷な生活と精神の不健全さをみて、労働時間や生活改善に努力しました。
1813年に「新しい社会観」を著わし、{人間の性格は環境の産物であるからなによりも環境の改善によって労働者の性格を変えねばならない}と訴えています。
そのために彼は「性格形成学院」を創設し、誉めたり叱ったりする賞罰をすべて否定するという独自のカリキュラムにもとづいて幼稚園や小学校のみならず夜間の成人学級をも経営していました。これは暗記教育が一般的だった当時の教育界では画期的なものでした。
さらに、彼は1825年からアメリカのインディアナ州に自給自足を原則とした私有財産のない共同生活村(ニュー=ハーモニー村)を多額の資産を投入して創設しました。
彼はここで、
- 1. スクウェア・パレスという壮麗な建築物をニュー=ハーモニーの丘に建築する。
- 2. アメリカ独立運動の発祥の地であり文化の中心であったフィラデルフィアの「フィラデルフィア自然アカデミー」の科学者たちをコミュニティに参加させる。
- 3. 完全平等のコミュニティ実現のための新憲法を制定する。
という3つの大計画を行いました。
しかし、結局実現できたのは3番目の新憲法の制定だけで、ニュー=ハーモニー村は1827年に内部分裂と経済的な行き詰まりから失敗してしまいました。
その後失意のうちに帰国しましたが、彼の名声と影響力は国内で高まり、 私的利潤の撤廃を目指すロンドン協同組合の発足、ついで、100万人以上の加入者からなる全国労働組合大連合の議長も務めました。オーウェンの名はイギリス労働組合運動の父として不動のものになりました。
工場法の制定や,労働組合・協同組合の育成にも貢献し、さらに世界で初めて幼稚園を創設するなど革新的な事業を企てました。
オーウェンは「根絶さるべき社会の3悪」として、「私有財産」、「既成宗教」、「愛なき結婚」をあげています。